2010年01月18日

いにしえに迷うG幻想

浅茅が原.jpg 浅茅が原

方向を見失ったのは、それから無難な参道をそれて、日ごろ親しんでいる安心感ゆえに、夜の浅茅が原に踏み込んでからである。

昼間なら、広々とした芝生に鹿が群れをなして遊ぶ、のどかな風景である。

また隣接する飛火野、雪消の沢、鹿苑とともに万葉集にも詠まれ、天平の大宮人たちに、こよなく愛されてきた土地である。

名前からして、いかにも典雅でゆかしい。

今でも、春や秋には、東大寺や興福寺などの見学に疲れた観光客や修学旅行生などの、絶好のくつろぎの場となる。

夜陰に手探りながら、老松の木立の間をさまよった。

時々、鹿がかすかに動く気配を感じる。

水面がかすかに光っているのは鷺池か、それとも荒池か。

浅茅が原にいるのか、雪消の沢なのか。

夢遊病者のようにあてどなく、天平の闇をいっとき彷徨した。

そんな時、虚空に、三月堂の月光菩薩や聖林寺の十一面観音菩薩、秋篠寺の技芸天などが、ほの白くぼうっと立ち現れては消えていった。

めくるめく幻想のなかで私は、なぜか母親の胎内を思っていた。

 





posted by asaborake at 16:53| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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