2010年01月07日

いにしえに迷うD奈良に遊ぶ

西の京.jpg 西の京

私は、奈良に遊ぶときは光明皇后ゆかりの新薬師寺の宿坊に泊まることが多い。

皇后が夫、
聖武天皇の眼病平癒を祈願して建立された古寺である。

あまり広くない境内の菩提樹の下に、
会津八一の歌碑が立っている。

    ちかづきて  あふぎみれども  みほとけの
              
            みそなはすとも  あらぬさびしさ

その日は、朝まだき、萩の寺をたち、悲運の大津皇子眠る、また数多くの歌や伝説に詠まれてきた二上山に赴いた。

それから、山の中腹にある、中将姫伝説の当麻曼荼羅で名高い当麻寺の諸仏を仰ぎ、帰りしな西の京に立ち寄った。

千古の松林の中に、盲目の
鑑真和上とともに静かに息づいてきた唐招提寺。

その、いにしえの余香しみわたる伽藍の清らかなたたずまいと、境内に敷きつめられた白砂を踏みしめる時の、生命を洗われるような感触に心をひかれ、大和地方を訪れるたびに一度は門をくぐるのである。





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2010年01月03日

いにしえに迷うCコロセウムの廃墟

コロセウムの廃墟.jpg コロセウムの廃墟

いつの間にか、冷たい雨さえ降り出してきた。

方向感覚をなくした
ローマの夜道を、駆けるようにさ迷った。

と、そんな時である。

小さな私を押し潰すように突然、眼前に黒い巨大な物体が出現した。

瞬時のうちに黒々とした大きな塊が前方に立ちはだかり、
異郷人を威嚇したのである。

驚愕し、戸惑いながらも暗黒に目を凝らした。

コロセウムである。

巨大な
コロセウムの廃墟である。

そのとき私は、2千年前の古代ローマの闇に、茫然自失として立ち尽くしていた。

暗澹たる歴史の深遠のただ中に放り込まれた、あわれな遠来の東洋人であった。

ひとしきり激しくなった雨の中で私は、彼我の文明の底知れぬ隔たりを感じていた。

その奇怪で、おどろおどろしい瓦礫の山ほど私に、
西洋文明との違和感、取り付く島のない断絶感を覚えさせたものは、いまだかつてない。





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2009年12月29日

いにしえに迷うBローマの闇路

 トレビの泉.jpg トレビの泉

その青年と、トレビの泉に近いレストランで夕食をとり、映画で有名なテルミニ(終着駅)前のホテルへ帰ろうとドアを押した。

外は既に暗く、夜風は肌を刺すほどに冷たかった。

しかし、日中何度か歩いているし、イタリア料理に舌鼓を打ったあと、一杯機嫌で弾むような足取りで帰途についた。

ヨーロッパの古い街には所々に広場があり、それが散歩のための格好の目標になる。

だが、その時に限り、行けども行けども目当ての広場に行き当たらない。

ワインの酔いもさめ、弾んでいた気持ちもしだいに焦りに変わってきた。

真冬の異国の闇路、心細さが募ってきた。

道を間違えたのだろう。

きっと、とんでもない方向に歩いているんだ。

あたりは真っ暗闇。

心もとなさと焦燥にかられ、しぜん急ぎ足になっている。

古い石畳やアスファルトに響く自分の靴音が、不安をいやます。




posted by asaborake at 18:27| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする